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すいか断想


スイカ今年のすいかは例年のものより甘いような気がする。幸運にもよいものを引き当てているだけかしら。

すいかすいかを食べるときって、蟹のときと同じように、無口になる。
そして、その静かな時間に、ぼんやりと思考がうす甘く融け出して、ときどき記憶のかけらがきらきらと立ち昇ってきたりするのが好きだ。

スイカ夏の朝食のテーブルにすいかを出すと、大抵そのかたちについて相方氏から物言いがつく。
工夫してタテヨコ切っているつもりなのだけど、どうも私の切り方は厚すぎるらしい。
相方氏は切り身に直接かぶりつきたいタイプで、私は食べ始める前に見える範囲の種をぜんぶスプーンで取ってしまいたいたちなので、好みの厚さが異なるのだ。なかなか程よい着地点が見いだせずにいる。

すいかそれにしても、最初に種を全部取るのって、「武装解除」という感じでほんとに愉しい。ちょっとこわいような目つきになって集中していると思う。

すいか小さい頃、「すいかちゃん」というあだ名をつけられたことがあった。
「Asca」と響きが似ているのと、笑ったときの口のかたちがすいかの切り身そっくりだからということで。
その頃にいただいたり自分で集めたりしたすいかグッズが、今も現役で活躍している。

すいかどんなに完熟でも、どこか頼りないようなすいかの甘み。太陽の強い季節の果物って、概してこうした、追えば逃げるような甘みのものが多い。甘みを求めるうちにいつのまにかたくさん水分をとれるように、という自然のやさしい配慮かな。

スイカすいかの甘みを舌で追いかけていると、頭の芯がぼんやりとしてきて、気づかぬうちに平行世界に迷い込んでしまうような心地になる。イメージとしてはキリコの絵のなかに迷い込む感じ。ほの明るくてがらんとした、奇妙に影の長い、知っているような知らないような場所。
だから、ひとりきりで食べるのは、ちょっぴり怖い。

すいかすいかでトリップするのは、江國香織さんの影響もあると思う。エッセイなどに出てくる、アメリカ留学中に愛飲したという、あいまいでもの哀しい水っぽさの「スイカシェイク」の描写。それから、小説「すいかの匂い 」、そして「なつのひかり」。意外にも「なつのひかり」のほうがより「すいかっぽい」。まぶしいひかりのなかで意味を解体させられる境界。ひんやりしていて魅力的な、戻れなくなりそうな怖さ。

スイカ私は物心つく前からすいかが大好物だったそうなのだけど、娘の離乳食に出してみたら全力で拒否された。きゅうりも拒絶するので、瓜科全般が苦手なのかも。他の果物に完熟のすいかを少しだけ混ぜてみても敏感に察知してしりぞける。そしてその後しばらく、混ぜられた果物のことも疑惑の目でにらみ続ける。

すいかすいかを食べ終わって、うっすら赤みの残る皮を眺めていると、経験も知識もないのだけれど、かぶとむしをお世話したいような気分になってくる。(本当はおなかを壊すから、かぶとむしにすいかの皮はあげてはいけないのだけど)

スイカ食べ終わると、すべての物思いがなかったことのように去ってゆき、けだるいもの哀しさだけが残る。
すいかからしかもたらされない、夏の感触。
今年も満喫しました。

** | Food | comments(2) | trackbacks(0)|


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コメント
あの薄甘いスイカの味って、独特の夏の風物詩よね。日本に住まう人に必要な、夏の水分を補ってくれている気がする。

うちの夫も、スイカの切り方には一家言あるみたい。毎年聞くけど毎年忘れちゃうので、毎年聞いて覚えたころに夏が終わるという。今年は、「どうやら夫は、スイカはやや薄めに切ってあるのが好きらしい」というところまでは記憶しました。

しかし、「やや薄め」の感覚を忘れちゃうんだよなあ。

09/13 by みわっち
「毎年聞いて覚えたころに夏が終わる」「そしてまた忘れちゃう」の、よーくわかります! 私もこんな記事書いておきながら全部忘れて、来年の夏にはまたぶ厚いすいかを食卓に出すことでしょう・・・
夏のあいだに起こったことって、太陽の光で灼きつくようなインパクトがあるのに、どうして暑さとともに潮がひくように薄れていっちゃうんだろう・・・そして1年後、蝉の声と一緒にぜんぶ(どこに保存されていたのやら)が生々しく戻ってくるのよね。
そんな不思議さと儚さが夏の魅力!だと思うので、夏は終わりかけの頃がいちばん好きです。
09/14 by Asca
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